Research Press Release
Ezh2タンパク質の発現増加で白血病性造血幹細胞が増える
Nature Communications
2012年1月11日
メチルトランスフェラーゼEzh2というタンパク質の発現が増加すると、白血病性造血幹細胞が増えて、骨髄に関連する骨髄増殖性疾患の発生につながることがわかった。この新知見は、血液のがんを治療するための新薬の開発に役立つかもしれない。研究成果を報告する論文は、今週、Nature Communicationsに掲載される。 がんにおけるEzh2の役割については論争があり、最近の研究では、Ezh2に腫瘍形成作用と腫瘍抑制作用の両方があることが示唆されていた。今回、S Gonzalezたちが、マウスの造血幹細胞でEzh2を強制発現させる実験を行ったところ、致死的な骨髄増殖性疾患が発生した。骨髄増殖性疾患は、骨髄中の骨髄細胞の過剰な増殖を特徴とし、脾臓の異常な肥大が起こる。また、Gonzalezたちは、骨髄増殖性疾患が造血幹細胞に始まることを明らかにし、その理由として、血液腫瘍の場合に発現異常が見られることで知られる幹細胞特異的な遺伝子の発現量がEzh2の発現によって上昇する点を挙げた。 Gonzalezたちは、Ezh2が骨髄性疾患における腫瘍形成という幹細胞特異的な役割を果たしており、骨髄性疾患の治療標的となりうると考えている。
doi:10.1038/ncomms1623
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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