Research Press Release

化学:市販のマグネットが宇宙での酸素生産を促進するかもしれない

Nature Chemistry

2025年8月19日

磁石は、微小重力下での水の分解速度を未改造の装置に比べて最大240%まで増加させ、宇宙飛行士向けに大幅に多くの酸素を生産するかもしれない概念実証研究を報告する論文が、Nature Chemistry にオープンアクセスで掲載される。この結果は、将来的に人類の宇宙探査を支援するより効率的な技術の可能性を示唆している。

宇宙ミッションでは、高効率で軽量な人間生命維持システムが不可欠なものの、現在のシステム(国際宇宙ステーションに搭載されているものなど)は複雑な機械部品に依存し、大量の電力を消費するため、よりシンプルで信頼性の高い代替手段が求められている。電気分解と呼ばれるプロセスを用いた水分解化学は、電極を用いて水を呼吸可能な酸素に変換し、宇宙船に輸送する必要のある追加の燃料と空気の量を削減できる。しかし、浮力不足のため、低重力環境下では電極表面からガス泡が容易に離れていかないため、宇宙飛行士が利用できる燃料や空気の量が減少する。従来提案された解決策には装置を攪拌や振動させる方法があったが、これらの方法は追加のエネルギーを必要とし、コスト増を招く。

Álvaro Romero-Calvo(ジョージア工科大学〔米国〕)、Katharina Brinkert(ブレーメン大学〔ドイツ〕)らは、宇宙ステーション内の環境を模擬した減重力環境を再現するドロップタワー実験を用いて、水電解時に電極表面からガス泡を除去する簡素化された方法を示した。著者らは、電解装置に市販のネオジム磁石を配置することで、磁場の強さにより酸素泡が電極からより容易に分離することを発見した。このアプローチは、低重力下での酸素と水素の生成を加速させた。著者らはまた、低重力下で水電解(ガス泡を分離する)を地球上の効率に近い値で実現する概念実証装置を開発した。

低重力下でのさらなる試験が必要だが、この方法は将来の宇宙探査における水電解装置の性能向上に活用できる可能性がある、と著者らは示唆している。

Akay, Ö., Monfort-Castillo, M., St Francis, T. et al. Magnetically induced convection enhances water electrolysis in microgravity. Nat. Chem. (2025). https://doi.org/10.1038/s41557-025-01890-0
 

doi:10.1038/s41557-025-01890-0

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