遺伝性出血性毛細血管拡張症における変更遺伝子が同定される
Nature Communications
2012年1月11日
肺動静脈奇形は、遺伝性出血性毛細血管拡張症の一部のタイプに見られる特徴だが、この奇形に関連する遺伝子がマウスとヒトで同定された。この新知見は、遺伝性出血性毛細血管拡張症の分子レベルでの解明をさらに進め、この疾患の多様な特徴についても一部解明を進めた。研究の詳細を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。 遺伝性出血性毛細血管拡張症は、静脈系の疾患で、肺動静脈奇形などの重大な合併症を伴うことがあり、遺伝性出血性毛細血管拡張症患者の約50%に肺動静脈奇形が見られる。遺伝性出血性毛細血管拡張症の原因は、TGFβシグナル伝達経路中に存在する複数のタンパク質の変異だが、この疾患の重症度の範囲を決める要素が何なのかはわかっていない。 これまでの研究で、TGFβ欠損マウスは死産となるが、その結果は実験に用いるマウスの系統によって左右されることが明らかになっていたが、今回、R Akhurstたちは、こうした研究結果を利用して、マウスの致死範囲の決定に関与するゲノム領域を絞り込み、この点で役割を果たす遺伝子としてホスファターゼ遺伝子PTPN14を同定した。今回の研究で、Akhurstたちは、オランダとフランスの遺伝性出血性毛細血管拡張症の患者コホートを研究対象として、PTPN14の遺伝的多型が肺動静脈奇形に関連していることを明らかにした。この新知見は、PTPN14が、遺伝性出血性毛細血管拡張症患者における肺動静脈奇形の存在に関連する変更遺伝子であることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms1633
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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