生態学:タコと魚の狩猟グループにおける共同リーダーシップ
Nature Ecology & Evolution
2024年9月24日
一部のタコや魚の種類が共同で獲物を狩る際にリーダーシップを共有しているように見えることを報告する論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。この発見は、タコと魚の洗練された異種間の社会生活に対する理解を広げるものである。
タコは通常、孤独な動物と考えられているが、ヒメジ(ヤギウオ)やハタなど数種の魚類を含む異なる魚類種とともに、軟体動物や甲殻類などの共有の獲物を狩るために集団で行動することが観察されている。これまでの観察では、タコが狩りを先導し、魚は通常それに従うことが示唆されていた。タコと魚の間のより複雑なグループ間相互作用が示唆されているが、それを記録することは難しいとされている。
Eduardo Sampaioらは、紅海でのスキューバダイビング探検中に、タコと魚の狩猟グループを追跡した。著者らは、1匹のワモンダコと、マルクチヒメジやアカハタなど異なる種類の魚からなる狩猟グループの合計13グループを観察した。120時間に及ぶ水中での潜水からデータを収集および分析した後、著者らは、異なる種類の意思決定において、リーダーシップがグループ間で共有されていることを報告している。例えば、ヒメジは環境の探索に特化し、狩猟グループがどこに移動するかを決定する一方で、タコは移動の可否とタイミングを決定していた。この共同作業により、グループの構成にもよるものの、タコや魚が単独で行動する場合よりも高い狩猟成功率につながっている。Sampaioらは、魚が他の魚に向かって急接近して追い払ったり、タコが魚をパンチしてグループの外側に追い払ったりするなど、グループのメンバー間の攻撃的な制御メカニズムも観察した。
著者らは、アナグマとコヨーテ、混成鳥類、ウツボとハタ類の群れなど、他の種類の混合種狩猟群が知られているが、タコと魚の狩猟群に比べると、社会的情報を利用して戦略を変える行動の柔軟性が低いようだと指摘している。
Sampaio, E., Sridhar, V.H., Francisco, F.A. et al. Multidimensional social influence drives leadership and composition-dependent success in octopus–fish hunting groups. Nat Ecol Evol (2024). https://doi.org/10.1038/s41559-024-02525-2
doi:10.1038/s41559-024-02525-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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