神経学:プラセボによる疼痛緩和と関連する脳回路がマウスで発見される
Nature
2024年7月25日
プラセボ効果による痛みの緩和を支える神経回路が、マウスモデルを用いて同定されたことを報告する論文が、今週Natureに掲載される。
プラセボ効果は痛みの緩和に関与している。痛みの緩和を予期すると、プラセボ鎮痛として知られるプロセスで、その痛みに対する知覚が低下する。これまでの研究で、プラセボ鎮痛は、脳の前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ;anterior cingulate cortex)の活動と相関していることが示されている。前帯状皮質は、痛みの感覚とも関連する脳の領域である。しかし、この現象の根底にある生物学的メカニズムは、まだ十分に解明されていない。
Grégory Scherrerらは、疼痛(とうつう)緩和がどのように媒介されるかを研究するために、プラセボ鎮痛のマウスモデルをデザインした。マウスは、床面の温度が異なる2つの部屋(快適な暑さの部屋と非常に暑い部屋)を連想するように条件付けされた。条件付けされたマウスは、暑い床にさらされた後、涼しい床の上で過ごす時間が長くなり、痛みが緩和されることを予期し、足を舐めるなどの疼痛緩和行動をあまり行わなくなった。
マウスの脳を追跡調査した遺伝子解析の結果、研究チームは、これまで痛みに関与しているとは考えられていなかった、前帯状皮質吻側部(ぜんたいじょうひしつふんそくぶ;rostral anterior cingulate cortex)と橋核(きょうかく;pontine nucleus)の間にある脳の領域に、痛みを和らげる行動に関連する経路があることを突き止めた。Scherrerらはまた、橋核にはオピオイド受容体が豊富に存在することにも注目している。これは、この領域が痛覚耐性に関与している可能性を示す証拠である。さらに、著者らは、前帯状皮質吻側部と橋核の経路において、痛みが和らぐという期待を信号として処理できる小脳内の細胞群を同定した。
著者らは、この脳経路を薬物や電極、認知行動療法などで刺激することで、個人の痛みを緩和させることができると述べている。
Chen, C., Niehaus, J.K., Dinc, F. et al. Neural circuit basis of placebo pain relief. Nature (2024).
doi:10.1038/s41586-024-07816-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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