生態学:1年先を予測することが海洋生物の保護に役立つかもしれない
Nature Communications
2023年12月6日
海洋管理ツールを使って、クジラが漁具等に絡まる事故やウミガメの混獲の可能性を最長1年先まで予測することが、それらの回避に役立つ可能性がある。このことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の知見から、既存の海洋管理ツールを用いて、生態系が極端な気候にさらされた場合にどのような状態になるかを気象予報と同じように警告できることが示された。
生態系と人間社会が気候変動によって地球規模で破壊されており、資源管理と意思決定を支援するための生態系予測が緊急に必要とされている。例えば、地球システムモデルが進歩すれば、気候変動が海洋生態系に及ぼす影響を予測する上で役立ち、これを用いて漁業への影響を予測し軽減することができる。しかし、今のところ生態系予測の適用例は限られている。
今回、Stephanie Brodieらは、生態系予測を使って、極端な気候によって引き起こされる人間と野生生物の相互作用を事前に警告できることを示している。今回の研究では、既にカリフォルニア海流生態系で使用されている管理ツールが用いられた。この管理ツールは、ザトウクジラなどのクジラ類が生息する低温の水域が海岸方向に移動して、クジラがカニ漁具に絡まるリスクが生じる時期を予測できる。また、この管理ツールは、アカウミガメの混獲を避けるため、流し網漁を禁止すべき期間を定めることもできる。これらはいずれも、海水温の異常に基づいている。Brodieらは、これらのツールを予測システムに移行して最大12カ月先までの巧みな予測を行えることに加えて、地域規模にダウンスケールする必要がない比較的低い分解能の全球的予測が役に立つ可能性のあることを示した。そのため、モデルのダウンスケールに必要な資源が不足する可能性のある発展途上国などの地域で、これらのツールを適用できるかもしれない。
Brodieらは、全球的な変化に伴う諸課題に直面した際に生じる不確実性を低減するためには、先を見越した管理戦略が有益であり、こうした管理戦略の策定にとって非常に重要なのが潜在的な脅威の事前警告であると述べており、海洋管理ツールを使って生態系予測を行うという方法を全世界の多くの沿岸生態系に拡大適用すれば、全球的な海洋資源管理の改善に役立つ可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-023-43188-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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