Research Press Release
放射線防護効果のある新化合物
Nature Communications
2011年10月12日
致死量の放射線を照射されたマウスの命を守ることのできる放射線緩和化合物が設計、合成された。今後の研究の展開によっては、放射線テロ対策、そして臨床放射線治療に用いる電離放射線照射から正常な組織を守る方法が開発される可能性もある。この研究成果を報告する論文は、今週、Nature Communicationsに掲載される。 電離放射線は細胞死を誘発し、現在、骨髄移植などの医療用途に積極的に利用されている。こうした用途では、細胞に無用の損傷が起こらないように何らかの保護対策がとられている。しかし、テロ攻撃や長期間の宇宙ミッションにおける放射線被曝といった制御不能な状況における保護対策の開発は遅れている。 今回、V Kaganたちが設計、作製したオレイン酸誘導体とステアリン酸誘導体は、ミトコンドリアを標的としており、細胞死を引き起こすアポトーシス促進性の酸化的事象を阻害する。この研究では、これらの誘導体をマウスに投与する実験も行われ、放射線照射の1時間前から24時間後の間に誘導体を投与されたマウスにおいて放射線防護効果が観察された。 Kaganたちは、今回の研究によって示された特定のタンパク質複合体の新しい「酸化促進性」酵素活性が、抗アポトーシス性の放射線防護薬の標的になりうると考えている。
doi:10.1038/ncomms1499
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
加齢:老齢マウスに「若々しい」免疫系を取り戻させるNature
-
気候変動:極域の氷融解が世界の基準時刻に影響を及ぼす可能性Nature
-
生態学:温暖化と乾燥によってハチ類の多様性が脅かされているNature
-
機械学習:ベルギービールの風味を高めるNature Communications
-
生物学:妊娠中の母マウスの食餌が仔の顔の特徴に影響するかもしれないNature Communications
-
気候変動:気候変動がワイン生産に及ぼす影響を評価するNature Reviews Earth & Environment