人工知能:コンピューターは赤ちゃんのように思考できるか?
Nature Human Behaviour
2022年7月12日
物理世界の基本的で常識的なルールを人間の赤ちゃんと同じように学習することのできる人工知能システムについて報告する論文が、Nature Human Behaviour に掲載される。
とても幼い子どもであっても、「直感的な物理学(intuitive physics)」(世界がどのように動いているかという常識的なルール)は知っている。例えば生後5か月の赤ちゃんは、おもちゃが突然消えるといった、物理的にあり得ない事象を含む光景を見せられると驚く。機械学習アルゴリズムはさまざまな物体を認識する学習などの多くの課題に関して人間が持つ能力をはるかにしのいでいるが、直感的な物理学を学ぶことは、機械学習アルゴリズムにとって難しいことが分かっている。
Luis Pilotoたちは今回、直感的な物理学を学習できる深層学習システム「PLATO」を紹介している。PLATOは、赤ちゃんがどのようにして学ぶかという研究からヒントを得たシステムを備えている。特にPLATOは、物体が、我々を取り囲む物理的世界の表現や予測において中心的な役割を果たしているという理論を採用している。研究チームはPLATOを、地上に落下するボール、他の物体の背後を転がって再び現れるボール、ぶつかって跳ね返るボールといった、数多くの単純な光景が撮影された動画を見せることで訓練した。訓練の後、PLATOによる学習の成否を、ときにあり得ない光景を含む動画を見せることで検証した。その結果、PLATOは幼い子どもと同じように、互いにぶつかることなく通り抜ける2つの物体といった、理屈に合わない光景を見せられると、「驚き」を示した。こうした学習の効果は、わずか28時間分の動画をPLATOに見せることで確認された。
研究チームはPLATOが、人間が直感的な物理学をどのように学習しているかを研究するための強力なツールとなり得ること、また人間が世界を理解する上では物体の表現が重要であることを示唆していると結論している。
doi:10.1038/s41562-022-01394-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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