ウイルス学:マウスにおけるSARS-CoV-2オミクロン株の複製と病原性
Nature
2022年1月21日
Virology: Ability of Omicron to replicate and cause disease in mice investigated
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株の複製と病原性を細胞とマウスモデルの2つのレベルで調べる研究が行われ、オミクロン株の複製効率と病原性が、他の懸念される変異株より低いという知見が得られたことを報告する論文が、Nature に掲載される。
今回、Kwok-Yung Yuenたちは、一連の細胞とマウスモデルにおいて、オミクロン株の複製効率と病原性を調べた。ヒトの肺上皮細胞と腸上皮細胞を用いた実験室での実験で、生きたオミクロン株ウイルスの複製が、元のSARS-CoV-2株(野生型)と変異株(アルファ株、ベータ株、デルタ株)のいずれよりも少ないことが判明した。ヒト肺上皮細胞においては、オミクロン株の複製効率が、野生型の3分の1以下だった。これに対して、アルファ株、ベータ株、デルタ株の複製効率は、野生型と同じか、それより高かった。
さらに行われた研究で、オミクロン株は、特定の細胞においてウイルスの侵入を媒介する細胞膜タンパク質であるII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の利用効率が低いことが明らかになった。Yuenたちは、オミクロン株のスパイクタンパク質の変異がTMPRSS2経路を利用する能力を低下させ、ヒト上皮細胞株へのオミクロン株の侵入と複製を阻害しているという考えを示している。
マウスモデルにおけるオミクロン株の複製は、上気道と下気道の両方において野生型とデルタ株より低かった。また、肺組織の分析では、オミクロン株に感染した肺の炎症と損傷の程度が野生型とデルタ株の場合より低かった。さらに、オミクロン株に関しては、他の懸念される変異株と比べて、マウスの体重減少の程度が低く、生存日数が長くなった。
doi:10.1038/s41586-022-04442-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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