神経科学:神経画像化の利用促進が期待される低コストMRIスキャナー
Nature Communications
2021年12月15日
低コストで製造でき、高品質の神経画像を生成するMRI装置の試作品について報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この装置は、低・中所得国や診療現場でMRIを利用しやすくする上で役立つ可能性がある。
磁気共鳴画像法(MRI)は、脳の損傷や疾患を評価するために用いられる最も価値のある臨床的手段であるが、世界人口の約70%が、ほとんどあるいは全く利用していないと推定されている。従来のMRI装置は約100~300万ドル(約1億1000万~3億3000万円)という価格で、維持費として毎月約1万5000ドル(約165万円)かかる。また、超伝導磁石の冷却などのために大量の電力を必要とする。
今回、Ed X. Wuたちは、小型で低コストの携帯型超低磁場MRI装置(0.055テスラ)の開発について詳細に記述している。Wuたちは、この装置は、2万ドル(約220万円)以下の材料費での大量生産が可能で、標準的な交流コンセントに接続して使用でき、無線周波数と磁気を遮蔽する必要がないと推定している。また、Wuたちは、深層学習法を用いて、電磁干渉を除去することに成功し、この装置は、脳の異常を適切に診断するために使用可能な質の高い構造化された神経画像を生成した。Wuたちは、25人の患者を対象として、神経疾患(脳卒中、腫瘍など)を診断する予備試験を実施した。WuたちのMRI装置は、従来の3テスラのMRIスキャナーとの比較で、全ての患者において重要な病理の大部分を検出できることが判明した。
Wuたちは、この技術が、医療コミュニティー全体のアンメットクリニカルニーズを満たす可能性を秘めていると結論付けている。彼らは、公開されているオンライン版リポジトリで、重要なコードと設計を自由に入手できるようにしている。
doi:10.1038/s41467-021-27317-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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