免疫学:SARS-CoV-2の501Y.V2変異株は一部のCOVID-19患者由来の血漿と抗体による中和を回避する
Nature Medicine
2021年3月2日
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の501Y.V2変異株(南アフリカで最初に検出された)に含まれるのと同じ変異を持つシュードウイルスを作製し、これをCOVID-19の3種類の治療抗体や回復期の患者の血漿に曝露すると中和抵抗性が見られたことが、Nature Medicine に掲載される論文で報告されている。この知見は、再感染が起こりかねないことを示しており、またSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を標的とするワクチンが、新たに出現する変異株に対してあまり効果が上がらない可能性を示唆している。
SARS-CoV-2に感染すると中和抗体が作られ、これが数か月にわたって体内に存在して再感染から守ってくれると考えられている。このような抗体はウイルスの治療薬になる可能性があり、現在研究が進められている。しかし、SARS-CoV-2に対する抗体が新しい変異株も中和できるかどうかは、まだ明らかになっていない。
P Mooreたちは、SARS-CoV-2 501Y.V2変異株のスパイクタンパク質に見られる変異を持つシュードウイルスを使って、中和アッセイを行った。このシュードウイルスは実験室で作製され、標的細胞に1回だけ感染できるという、このようなアッセイに広く使われているタイプのものである。Mooreたちは、SARS-CoV-2 501Y.V2変異株と変異が生じていないSARS-CoV-2株を使って、3種類の抗体による中和の結果を比較し、3種類の抗体全てが元のSARS-CoV-2株は中和するが、501Y.V2変異株変異株は中和しないことを見いだした。さらに、44人の患者(重症のCOVID-19で入院した患者も含まれる)由来の回復期血漿による中和を調べたところ、血漿の中和活性は501Y.V2変異株では大幅に低下し、ほぼ半数の検体では全く認められなかったが、重篤な症状が見られた患者由来の3つの検体だけが高い中和活性を示すことが分かった。中和活性が見られなかった抗体も変異株のスパイクには結合するので、中和とは異なった様式で防御作用に役立っているのかもしれない。
研究をさらに進める必要はあるが、これらの知見は、変異に迅速に適応できるワクチン設計システムが緊急に必要なことを明確に示しており、また今後の治療に組み込めるようにもっと安定したウイルス標的を見つける必要があると、著者たちは述べている。
doi:10.1038/s41591-021-01285-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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