動物行動学:イヌには身体意識があって自分の行動の結果を理解できるのかもしれない
Scientific Reports
2021年2月19日
イヌは自分の体を障害物として認識していて、自分の行動の結果を理解している可能性のあることが、32匹の飼い犬を対象とした研究から明らかになった。この結果を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
これまでの研究から、イヌは共感や社会的学習といった複雑な認知能力を有することが明らかになっているが、彼らが何らかの形の自己認識を示すのかは分かっていない。
今回、Péter Pongrácz、Rita Lenkeiたちの研究チームは、イヌに「体が障害物になる」課題をさせる実験を行った。この課題は、小型マットの上に立たせたイヌが、マット上に配置した玩具を飼い主に渡すというもので、玩具をマットに固定した場合には、イヌは、玩具を飼い主に渡すためにマットから降りなければならない。
実験の結果、玩具をマットに固定した場合、玩具を地面に固定した対照実験と比べて、イヌはマットから降りる頻度が高く、マットから降りるまでの時間が短かった。対照実験で、イヌがマットから降りることは玩具を飼い主に渡す能力に影響を与えなかった。また、玩具をマットに固定した場合、対照実験と比べて、イヌが玩具を口にくわえたままマットから降りる頻度が高かった。以上の知見は、イヌが、玩具を飼い主に渡す際に自分の体が障害物になっていることを認識でき、課題を遂行するためにマットから降りる必要がある条件とマットから降りると課題を遂行できない条件を区別していたことを示唆している。
身体認識とは、自分自身の体と自分以外の物体との関係を理解する能力のことで、自己認識の前兆とされる。今回得られた知見は、イヌが身体認識を有し、自分自身の行動の結果をある程度理解しているという仮説を裏付けるものかもしれない。
doi:10.1038/s41598-021-82309-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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