Research Press Release

気候変動:温室効果ガスの排出を止めても地球温暖化は止まらないかもしれない

Scientific Reports

2020年11月13日

人為起源の温室効果ガスの排出量をゼロにすることができたとしても、全球の気温は今後数世紀にわたって上昇し続ける可能性のあることを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。この研究は、複雑度の低いモデルで1850~2500年の全球の気候をシミュレーションしたもので、著者たちは、他の研究者が別のモデルを用いて今回の結果を詳しく調べることを推奨している。

今回、Jorgen RandersとUlrich Golukeは、複雑度の低い地球システムモデル(ESCIMO;reduced complexity earth system model)を用いて、温室効果ガスのさまざまな排出削減量の場合に1850~2500年の全球の気候がどのような影響を受けて変化するのかを調べて、全球気温上昇と海水準上昇の予測を作成した。

モデル化の結果、人為起源の温室効果ガスの排出量が2030年代にピークを迎えて2100年までにゼロに減少するという条件下では、2500年までに、1850年と比べて全球の気温は摂氏3度上昇し、海水準が3メートル上昇するという予測が示された。また、全ての人為起源の温室効果ガスの排出量が減少して2020年にゼロになるという条件下では、全球気温は当初低下した後に摂氏約3度上昇し、海水準は1850~2500年で約2.5メートル上昇すると予測された。著者たちは、北極域の氷の融解と炭素を含む永久凍土の融解が続けば、大気中の水蒸気、メタン、二酸化炭素の濃度が上昇する可能性があるため、人為起源の温室効果ガスの排出量が減少した後も全球気温は上昇し続ける可能性があるという見解を示している。北極域の氷と永久凍土が融解すれば、太陽からの熱と光を反射する氷の面積も減少すると考えられる。

著者たちは、今回予測された気温と海水準の上昇を回避するには、1960~1970年に全ての人為起源の温室効果ガスの排出量をゼロにしておかなければならなかったという考えを示している。また、著者たちは、人為起源の温室効果ガスの排出量がゼロになった後の全球気温と海水準の上昇を防ぎ、これらが地球の生態系と人間社会にもたらし得る壊滅的な影響を抑えるためには、2020年以降、二酸化炭素を回収・貯留する方法によって、少なくとも毎年33ギガトン以上の二酸化炭素を大気中から除去する必要があると述べている。

doi:10.1038/s41598-020-75481-z

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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