気候:温暖化のために上陸後のハリケーンが衰弱が遅くなる
Nature
2020年11月12日
海水温が上昇した結果として、北大西洋のハリケーンが上陸後に衰弱するペースが以前より遅くなっていることを示唆する論文が、Nature に掲載される。今回の研究結果から、今後、ハリケーンの破壊的影響がより内陸部で激化する可能性のあることが示唆されている。
ハリケーンは、海からの水蒸気を動力源としているため、上陸すると急速に衰弱して強度が低下し、沿岸地域の被害を限定的なものにする。気候温暖化はハリケーンの強度に影響を及ぼすと考えられているが、ハリケーンの衰弱に対する影響は十分に解明されていない。
今回、Lin LiとPinaki Chakrabortyは、1967~2018年に上陸した北大西洋のハリケーンのデータを分析し、海水温の上昇に伴って上陸後のハリケーンが衰弱しにくくなったことを明らかにした。著者たちは、コンピューターシミュレーションを用いて、海水温の上昇によって、上陸時のハリケーンに含まれる水蒸気の量が増加し、そのために衰弱するまでに時間がかかることを示した。LiとChakrabortyは、1960年代のハリケーンは上陸後1日以内に75%衰弱していた可能性があるのに対し、現在のハリケーンの衰弱率は50%だと報告している。
LiとChakrabortyは、全球の気温が上昇するにつれて、内陸部でのハリケーン被害が大きくなる可能性が高いことも指摘している。こうした地域はまた、沿岸地域と比べてハリケーンに対する備えが十分でない可能性があり、このことは、ハザードへの備えという点で重要な意味を持っている。以上の知見が他の海盆で発生するハリケーンに関してどのような意味を持つのかを解明するには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41586-020-2867-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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