物理学:水素化物の室温超伝導
Nature
2020年10月15日
水素化物(水素を豊富に含む化合物で、有機物成分に由来する)に高い圧力をかけたところ、室温での超伝導が観測されたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。今回の発見は、完全に効率的な電気システムを作るという宿願の実現に向けた一歩となる。
超伝導とは、電気エネルギーが抵抗なく物質中を移動する現象である。超伝導効果は最初、絶対零度に近い温度で観測された。室温での超伝導が実現すれば、熱の発生が最小限に抑えられて、導電体と電気デバイスの効率が高くなる可能性がある。
高圧力下の水素に富んだ材料は、実証可能な超伝導温度が他の材料よりも高く、摂氏マイナス23度程度であることが明らかになっている。今回、Ranga Diasたちの研究チームは、電気抵抗ゼロの超伝導状態が達成される温度を摂氏15度まで引き上げた。この超伝導効果は、光化学的に合成される炭素質水素化硫黄の三元系において、267ギガパスカルの圧力下で観察された。267ギガパスカルは、標準的なタイヤ圧の約100万倍に当たる。この三元系では、レーザー光と圧力を用いて、元素前駆体(炭素、硫黄、分子状水素)を超伝導材料に変換する。この水素に富んだ材料が超伝導になる臨界温度は、圧力を高めるとともに上昇し、この関係は、今回の実験で達成された最高圧力まで維持された。
次の目標は、常圧で室温超伝導を観測することになる。Diasたちは、この三元系を化学的に調整することで、超伝導の誘起に必要な圧力を下げられる可能性があると述べている。
doi:10.1038/s41586-020-2801-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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