心理学:肖像画は「信頼性」の歴史的変遷をたどるのに役立つ
Nature Communications
2020年9月23日
ヨーロッパ人の肖像画において信頼性を伝える顔の特徴が西暦1500~2000年の間に増加し、こうした顔の特徴が社会的信頼の変化を示唆していることを明らかにした論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、顔画像処理アルゴリズムを用いて得られたもので、顔面筋の収縮の分析によって判明した信頼性を伝える顔の特徴の増加が、この期間中に生活水準が改善したことと関連していることも示唆している。
社会的信頼は、積極的な社会的成果(経済実績の向上や犯罪率の低下など)に関連している。しかし、信頼が何によって生じるのかは明確になっていない。その理由の1つは、社会的信頼の変化を長期間にわたって定量的に記録することが困難なことにある。
今回、Nicolas Baumardたちの研究チームは、信頼性の歴史的変遷をたどるため、肖像画の信頼性評価を生成するアルゴリズムを設計した。このアルゴリズムの妥当性は、最初に、人間の参加者が格付け評価した顔の写真を用いて検証された。続いて行われた検証で、このアルゴリズムは、表示された顔画像の年齢、性別、感情によって信頼性の知覚が異なるという科学文献に示された結果を再現した。
Baumardたちは、国立肖像画美術館(英国ロンドン)所蔵の1505~2016年のイギリス人の肖像画のコレクション1962点を分析し、信頼性を伝える特徴が年を追うごとに有意に増加したことを見いだした。この結果は、Web Gallery of Artに登録されている西ヨーロッパ19か国の1360~1918年の肖像画4106点でも再現された。
肖像画における信頼性を伝える特徴の増加が社会的信頼の変化を反映しているとする仮説に従って、このアルゴリズムは、ソーシャルメディアに投稿された6都市で撮影された2277枚の自撮り写真に適用された。その結果、ヨーロッパ価値観調査と世界価値観調査で個人間の信頼と協力が高いと評価された都市で撮影された画像には、信頼性を伝える特徴が多いことが判明した。
Baumardたちは、この期間中に信頼性を伝える特徴の増加に影響を与えた可能性のある要因を検討し、この増加が、制度的変化(より民主的な制度の台頭など)よりも1人当たりGDPの増加と強く関連していることを明らかにした。
doi:10.1038/s41467-020-18566-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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