生態学:霊長類における同性行動に関連する社会的および環境的要因
Nature Ecology & Evolution
2026年1月13日
非ヒト霊長類(non-human primates)における同性間の性的行動は、生態学的要因、生活史、および社会構造と関連していることを報告する論文が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。この知見は、491種の比較分析にもとづいており、霊長類の社会的進化に関する洞察を提供するものである。
同性間の性的行動は、多くの動物種で報告されている。この行動は、遺伝的要素をもち、適応度向上に寄与する可能性がある。しかし、ほかの進化的側面や生態学的要因との関連性は不明な点が多い。霊長類に関するこれまでの研究では、同盟形成や緊張緩和といった社会的文脈で同性間の性的行動が確認されており、関係性や集団動態の調整に役立つかもしれないことが示唆されてきた。しかし、共通の要因を明らかにする種間比較分析は限られていた。
Vincent Savolainenら(インペリアル・カレッジ・ロンドン〔英国〕)は、491種の非ヒト霊長類データを分析し、そのうち59種で同性間性行動の証拠を、さらに23種では、この行動が繰り返し観察される証拠を見出した。この結果により、異なる環境下での同性間性行動の頻度を分析することが可能となった。著者らは、同性間の性的行動が、食糧が限られた過酷または乾燥した環境(例:バーバリーマカク〔Barbary macaques〕)や捕食リスクが高い環境(例:ベルベットモンキー〔vervet monkeys〕)で生活する種でより一般的であることを発見した。また、この行動は、体サイズが小さい種、性別間で体サイズや外見に差異がある種(例:マウンテンゴリラ〔mountain gorilla〕)、長寿の種(例:チンパンジー)、さらに、複雑な社会システムや階層構造を持つ種(例:ヒヒ〔baboons〕)でより一般的であった。著者らの分析によると、同性間性行動は単純明快な適応ではなく、外的および内的要因が複雑に関与し、その文脈や規模に依存する相互作用から生じる。生活史形質は、環境要因によって形成され、それが社会的複雑性を形作り、同性間性行動のような特性の普及につながる。
研究対象となった霊長類種に共通するこれらの要因をふまえ、著者らは祖先的ホミニン(ancestral hominins)や現代人における同性間性行動の説明にも同様の要因が関与している可能性を推測している。ただし、研究結果は人間の性的指向やアイデンティティー、および実体験を扱ったものではないと強調し、解釈には注意が必要だと警告している。
同時掲載されるNews & ViewsでIsabelle Winderは、「現代的な比較手法が、おそらく初めて『人間らしい』行動の進化における複雑性の一端が現実的に明らかにされつつあることが、最も興味深い」と指摘している。
- Article
- Published: 12 January 2026
Coxshall, C., Nesbit, M., Hodge, J. et al. Ecological and social pressures drive same-sex sexual behaviour in non-human primates. Nat Ecol Evol (2026). https://doi.org/10.1038/s41559-025-02945-8
News & Views: Drivers of same same-sex sexual behaviour
https://www.nature.com/articles/s41559-025-02940-z
doi:10.1038/s41559-025-02945-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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