生物学:昆虫の食物摂取を調節するHodor(栄養感知タンパク質)
Nature
2020年3月19日
キイロショウジョウバエの腸内で発見された昆虫特異的な栄養感知タンパク質Hodorが食物摂取の調節と発生成長制御に関与していることを報告する論文が、Nature に掲載される。Hodorの働きを阻害することは、病気を媒介する昆虫(蚊など)の個体数を制御する方法として利用できるかもしれない。
細胞や生物は、体内の安定性を維持すること(ホメオスタシス)と周囲の環境の変化への適応のために栄養素を感知する必要がある。金属イオンのような微量栄養素は、成長と発達に重要な役割を持つことが知られているが、金属がどのように感知されるかは、あまり解明されていない。今回、Irene Miguel-Aliagaたちの研究チームは、解明を進めるため、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の腸を調べた。消化管は、エネルギー恒常性に関与していることが知られているからだ。今回の研究では、栄養素の感知に関与すると考えられる100種以上の候補タンパク質の遺伝子スクリーニングが行われ、特に栄養素の乏しい条件下で幼虫の発生を調節していると考えられる1つの受容体が発見された。このタンパク質は、Hodor[“hold on, don't rush”(ちょっと待って、あわてないで)]の略語と名付けられ、その発現を阻害すると、発育遅延が生じた。
Hodorは亜鉛を感知するタンパク質で、亜鉛を使って細胞内、細胞外に塩素を輸送し、栄養物の感知と増殖を調節する経路を促進する。キイロショウジョウバエの食餌に含まれる亜鉛の量を増やすと摂食量が増加したが、Hodorを遮断すると減少した。Miguel-Aliagaたちは、この受容体が、動物を栄養豊富な食物源に誘導する際に役立っているという考えを示している。(亜鉛などの金属は、果物や他の食品に含まれる酵母によって産生される。)さらに、Miguel-Aliagaたちは、蚊のhodor遺伝子を欠失させることが蚊にとって致命的なことを実証し、体内に摂取可能な薬物を用いることで、こうした疾患媒介動物を標的に定めて、制御できるという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-020-2111-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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