【環境】紅海深部から大気汚染ガスが大量に排出されている
Nature Communications
2020年1月29日
紅海北部の深海から大量の非メタン炭化水素ガス(エタン、プロパンなど)が排出されていることを報告する論文が掲載される。今回の研究では、こうした自然に貯蔵された汚染物質が大気中に排出される量は、一部の中東産油国からの人為的排出量を上回っていることが示唆されている。
今回、Efstratios Bourtsoukidisたちの研究チームは、2017年7~8月にアラビア半島周辺で行われた観測の結果を集積して、炭化水素汚染物質の排出量を定量化し、この観測結果を既存の大気モデルと比較した。その結果、紅海北部の上空でのエタンとプロパンの観測値が、モデルによる推定値よりもはるかに高いことが分かった。また、Bourtsoukidisたちは、これらの汚染物質を運ぶ気団の軌跡をたどることで、海中の排出源を突き止めた。炭化水素ガスの排出量は年間0.2テラグラム(2億キログラム)以上で、採油・採ガス活動の盛んな国々(アラブ首長国連邦、クウェート、オマーンなど)からの人為的排出量に匹敵することも分かった。
非メタン炭化水素ガスは、大気中に排出されると、窒素酸化物と相互作用し、人間の健康に有害な一連の化合物(オゾンなど)の形成を誘発する。Bourtsoukidisたちは、予想される船舶交通量の増加とそれに伴う窒素酸化物排出量の増加によってオゾン形成が増幅され、この地域の大気汚染度に影響が出る可能性があると警告している。
doi:10.1038/s41467-020-14375-0
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