【気候科学】アマゾン川流域の火災によってアンデス山脈の氷河の融解が進むかもしれない
Scientific Reports
2019年11月29日
アマゾン南西部(ブラジル、ペルー、ボリビアのアマゾン川流域)の熱帯雨林の火災によって、アンデス山脈の熱帯氷河の融解が増加する可能性のあることを明らかにした論文が、今週掲載される。
今回、Newton de Magalhaes Netoたちの研究チームは、2000年から2016年までに収集した火災事象、煙流の動き、降水量、氷河融解に関するデータを用いて、アマゾン川流域におけるバイオマス燃焼がボリビアのゾンゴ氷河に及ぼす影響の可能性をモデル化した。その結果、バイオマス燃焼に由来するエアロゾル(例えば黒色炭素)が、風によってアンデス山脈の熱帯氷河に運ばれる可能性のあることが判明した。この熱帯氷河に運ばれたエアロゾルは、雪の中に堆積し、雪が黒色炭素や塵粒子によって黒ずんでアルベド(光の反射率)が低下して、氷河の融解が進む可能性がある。
Netoたちは、火災の季節がアマゾン川流域にとって最も危機的だった2007年と2010年のデータを集中的に解析し、積雪アルベドの低下について、黒色炭素のみが原因である場合と以前に報告された量の塵が存在する状態で黒色炭素が原因となる場合を調べた。今回作成されたモデルによれば、黒色炭素や塵が単独で氷河の年間融解量を3~4%増加させ、黒色炭素と塵の両方が存在する場合には6%増加させる可能性がある。もし塵の濃度が高ければ、塵のみで氷河の年間融解量が11~13%増加し、塵と黒色炭素が存在する場合に12~14%増加する可能性があるとされた。この知見は、アマゾン川流域におけるバイオマス燃焼の影響が、雪に含まれる塵に依存することを示唆している。
世界の食料需要に関連した圧力により、ブラジルの農業と森林伐採がさらに拡大すると考えられ、アンデス山脈の氷河に影響を与える可能性のある黒色炭素と二酸化炭素の排出量が増加するかもしれない。
doi:10.1038/s41598-019-53284-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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