【医学研究】実験室内でヒトの声帯組織の3Dモデルを作製する
Nature Communications
2019年9月25日
ヒトの声帯組織(声帯ヒダ粘膜)の3Dモデルを作製するための実験系について報告する論文が、今週掲載される。この3Dモデルがタバコの煙に触れると、喉頭に見られる反応(炎症)が再現される。この3Dモデルによって、声帯ヒダの疾患や損傷に用いる薬剤や治療方法の研究ができるようになる可能性がある。
声帯ヒダは、ヒトの発声の基盤となる一方で、音声コミュニケーションと消化管への飲食物の通過にそれぞれ対応して、気道への物質の侵入を防ぐためにも不可欠だ。声帯ヒダは、外界からの刺激(煙、アレルゲン、感染症を含む)を主な原因とする慢性炎症を起こしやすい。しかし、健康な声帯から細胞試料を得ようとすると回復不可能な損傷を引き起こす可能性があるため、声帯の疾患と修復戦略の研究は難しい。
今回、Susan Thibeaultたちの研究グループは、ヒト誘導多能性幹細胞(hiPSC)から声帯ヒダの上皮を作製できることを示して、過去に行ったマウスの研究を前進させた。今回の研究では、hiPSC由来の声帯ヒダ組織が、生来の声帯ヒダ粘膜と遺伝的、形態的に類似していることが明らかになった。次にhiPSC由来の声帯ヒダ組織を5%タバコ煙抽出物に1週間曝露して、声帯ヒダ粘膜に喫煙関連炎症を誘発できるかどうかを調べた。その結果、タバコの煙が、粘膜の炎症と細胞種の異常なリモデリングを引き起こし、上皮バリア構造に影響を及ぼすことがわ分かった。
doi:10.1038/s41467-019-12069-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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