Research Press Release
【創薬】デザイナー分子を用いた糖尿病治療薬
Nature
2019年9月26日
2型糖尿病の新しい治療薬候補がマウスの健康と代謝に複数の有益な影響を与えることを報告する論文が今週掲載される。この新薬候補は、2型糖尿病以外にもさまざまな疾患(例えば、筋萎縮症)を治療する可能性を秘めているが、臨床試験を行う必要がある。
現在、2型糖尿病の患者数は、3億7000万人と推定されており、2030年には倍増すると予想されている。2型糖尿病は、薬物によって管理できるが、病気の進行を止めたり、症状を回復させたりする治療薬はない。
今回、Mark Febbraioたちの研究グループは、インスリン抵抗性を改善し、食物摂取量と体重を変化させることが知られている2種類の分子[インターロイキン-6(IL-6)と毛様体神経栄養因子(CNTF)]の特徴を組み合わせて、新しいデザイナー分子IC7Fcを作出した。この薬剤を肥満マウスで検証したところ、血糖値が低下し、肝臓における脂質の蓄積が防止された。また、マウスの食物摂取量が減り、体重が減ったが、筋肉量は、現状維持か増加に転じた。
IC7Fcの派生元である「親」薬剤は、それ自体に有害な作用があり、臨床開発はできない。これに対して、IC7Fcは、マウスとヒト以外の霊長類において明らかな副作用を示さない。Febbraioたちは、こうした肯定的な結果を踏まえて、現在、第I相ヒト臨床試験に進もうとしている。
doi:10.1038/s41586-019-1601-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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