【生態学】ストレス耐性のあるサンゴは海水温が下がっても耐熱性を維持する
Nature Communications
2019年9月18日
耐熱性のあるサンゴは、海水温が下がっても健康状態と熱波に対する耐性を維持するが、より高い海水温に順応してしまうと、白化閾値が上昇しなくなるという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、極端な海水温条件下にあるサンゴを利用すれば、水温の低い海域で衰退したサンゴ礁の回復に役立つ可能性があるが、そのようなサンゴは、急速に温暖化する環境に十分に適応できなくなることを示唆している。
海水温が大きく変動する海域で繁殖するサンゴ礁の存在が明らかになり、一部のサンゴが海水温の上昇に適応できるかもしれないという期待が高まっているが、気候変動に合わせて素早く適応できるのかどうかはわかっていない。
オーストラリア北西部のキンバリー地域のサンゴ礁は、極端な海水温の変動に耐えているが、今回、Verena Schoepfたちの研究グループは、このサンゴ礁のサンゴ群体を使って熱的実験を行った。このサンゴ群体は、水槽内に移植され、水槽内の海水の温度を本来の生息地の水温、それより摂氏4度低い状態、摂氏1度高い状態にそれぞれ安定させ、あるいは水温を変動させて実験が行われた。このサンゴ群体は、摂氏4度低い状態に9か月以上順応し、摂氏1度高い状態に6か月以上順応したが、最高水温がそれぞれの季節の正常範囲を超えると健康状態が低下し始めた。また、このサンゴ群体で2週間の熱ストレス試験が行われたが、その白化閾値は上昇しなかった。
今回の研究で得られた知見は、極端な環境に適応したサンゴ礁でさえ、将来の海洋温暖化に十分に順応できないことを示唆している。しかし、海水温が低下しても耐熱性を維持する能力をサンゴが持っているということは、そうしたサンゴ群体が天然の避難場所となり、そこから分散する幼生が、白化を起こしやすい低水温の海域に定着する可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41467-019-12065-0
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