【生態学】全球的な干潟の消長をマッピングする
Nature
2018年12月20日
干潟(砂や岩石、泥でできた平地で、潮汐氾濫が一定の間隔で発生する)の沿岸生態系の全球的地図とその消長を図示した結果を明らかにした論文が、今週掲載される。この新知見は、十分なデータが得られた地域(マッピングされた領域の17.1%)で1984~2016年の間に干潟の16%が消失したことを明らかにしている。
干潟生態系は、暴風からの保護、海岸線の安定化、食料の生産など、全世界の数百万人の人々の生活を支える重要なサービスを提供しているが、沿岸の開発、海水準上昇、浸食などさまざまな要因によって強烈なプレッシャーにさらされている。干潟は、最も広範に分布した沿岸生態系の1つだが、その全球的分布と現状は分かっておらず、干潟を管理し、保護する活動の妨げになっている。
今回、Nicholas Murrayたちの研究グループは、約70万点の衛星画像を用いて、現在の干潟の全球的広がりと、1984~2016年の33年間の干潟の消長をマッピングした。その結果、地球表面の少なくとも12万7921平方キロメートルが干潟生態系であること(この面積は全世界のマングローブ占有面積に近い)、3大陸(アジア、北米、南米)のわずか8か国に干潟全体の約50%が存在していることが明らかになった。国別では、干潟の面積が最も広いのがインドネシアで、中国、オーストラリアが続く。この33年間に十分な衛星データが得られた地域では、干潟の面積は約16%減少していた。このことは、1984年以降に全世界で2万平方キロメートル超の干潟が消失した可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41586-018-0805-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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