過密な風力発電所は隣接する風力発電所に悪影響を及ぼす
Nature Energy
2018年11月27日
風力発電所は、後流の風速を数十キロメートルにわたって減速させることがあり、これによって風下にある他の風力発電所の発電能力をかなり低下させる可能性があることが、今週報告される。こうした風力発電所の効率を悪くする立地を抑止するための適切な法律は存在しないだろう。
風車が、その風下の気流の速度を低下させることは知られている。こうした風速の変化の測定は難しいの、この影響に関する研究の大半は、コンピューターモデルに頼って、風車から所与の距離だけ離れた地点の風速がどの程度低下するか調べている。同様に、風下の発電に及ぼす後流の影響を正確に測定することは難しく、複数の風車がある風力発電所の間で定量化するのはさらに困難である。
今回J Lundquistたちは、別の風力発電所が風上に建設された際の、テキサス州西部の風力発電所の発電量の変化という特異な記録を使った。Lundquistたちは、風下の風力発電所の発電データをまとめることで、風下の風力発電所は、発電量の低下によって年間約200万ドルの損失を被っている可能性があると見積もっている。次に彼らは、コンピューターモデルを使って、今回の知見を証明した。さらに著者たちは、関連する米国の法律と条例を精査して、風力発電所の効率を悪くする立地を抑止する適切な法的枠組みが存在しないことを見いだした。今回の研究は、風力は最も環境に優しい電力源の1つと見なされることが多いが、風力発電所の立地をより賢く選べば、隣接する風力発電所どうしが意図せずに風力源を奪い合うことになる状況を避けられることを示している。
doi:10.1038/s41560-018-0281-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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