出生前の遺伝子治療によって致命的な神経変性疾患を防ぐ
Nature Medicine
2018年7月17日
早期発症型の致命的な神経変性疾患が、マウス子宮内の胎仔脳へ遺伝子治療ベクターを送達する方法によって防がれた。
ゴーシェ病は遺伝性疾患で、肝臓や脾臓の腫大、骨の脆弱化、骨痛、貧血、疲労、出血傾向などの症状が引き起こされる。これらの症状は、本来なら分解されるはずの脂質が蓄積するために生じる。軽症型のゴーシェ病では、こういった症状は出生後に酵素補充療法を行うことで治療できるが、早期に不可逆的な神経変性の起こる、より重症なタイプに対しては現在のところ治療法がなく、死に至ることが多い。このような予後からすると、可能な治療はできるだけ早く開始する方がいいと考えられる。
S Waddingtonたちは、広範囲にわたって発現するように改変したウイルスベクターを用いて、ゴーシェ病で欠失している酵素をコードする遺伝子を胎仔マウスの中枢神経系に外科的に送達した。子宮内でこのベクター治療を受けたマウスは、治療を受けなかったマウスよりも脳の変性の程度が軽く、生存期間もかなり長くなった。Waddingtonたちはさらに、臨床応用に向けた一歩として、超音波を使って同じような遺伝子導入ウイルスベクターを誘導し、子宮内にある非ヒト霊長類胎仔のもっと大型の脳へと送り込む方法を開発した。
送達されたベクターが、標的動物の一生を通してどの程度の発現を維持するのか、特に非ヒト霊長類のかなり大きな中枢神経系でどうなのかを明らかにするには、さらなる研究が必要である。また、このような遺伝子治療法に関しては、出生前の病気について早期に正確な診断を得ておくことも必要となろう。
doi:10.1038/s41591-018-0106-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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