【がん】一般的な化学療法治療の効果がヒスチジンの補充によって高まるかもしれない
Nature
2018年7月12日
一般的な化学療法剤の有効性がヒスチジンの補充によってさらに高まる可能性のあることがマウスの実験から示唆されたことを報告する論文が、今週掲載される。
メトトレキサートは、さまざまな固形がんと血液がんの治療に用いられる化学療法剤である。メトトレキサートは、代謝拮抗薬の1種で、がんの増殖にとって広く必要な、がん細胞におけるDNAの産生・修復とタンパク質の産生を阻止する作用がある。メトトレキサートは、ヌクレオチド合成に必須のテトラヒドロ葉酸(THF)の産生を阻害するが、毒性が高いという欠点があり、患者の治療に用いることに制限がある。そのため、がん細胞に対するメトトレキサートの効果を高める方法が大いに求められている。
今回、David Sabatiniたちの研究グループは、CRISPR-Cas9系を用いたスクリーニング法によって、メトトレキサートを投与された白血病細胞のスクリーニングを行い、メトトレキサートに対する感受性を亢進させる遺伝子の検出を試みた。その結果、ヒスチジン(タンパク質合成に用いられるアミノ酸)の異化を助ける酵素のコード化過程が同定された。この過程は、これまでメトトレキサートに対する感受性とは結び付けられていなかった。ヒスチジンの異化過程では、メトトレキサートの場合と同様に細胞内のTHF濃度が低下し(THFの産生が阻害されたためではなく、THFが枯渇したため)、それによってメトトレキサートががん細胞に及ぼす負の影響が増強された。
マウスの場合、メトトレキサートの低用量投与による化学療法治療は、ヒスチジンの投与を同時に実施した方が、腫瘍サイズの縮小効果と腫瘍細胞の致死効果が高くなった。Sabatiniたちは、こうした研究知見が臨床試験に反映されれば、メトトレキサート投与による治療法の有効性を単純で低コストの食事介入によって高められる可能性が生まれ、毒性の高いメトトレキサートの処方が低用量で済むようになると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0316-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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