Research Press Release
【老化】細胞のリサイクルが活発化するとマウスの長寿と健康増進につながる
Nature
2018年5月31日
オートファジーの細胞過程にとって非常に重要なタンパク質に変異があると、寿命と健康寿命の両方が延びることをマウスで明らかにした論文が、今週掲載される。
オートファジーは進化上保存されてきたタンパク質分解経路で、機能不全を起こした細胞成分を除去し、その構成要素をリサイクルして、モデル生物の長命を促進している。しかし、オートファジーが哺乳類の長命の促進に果たす役割は十分に解明されていない。
これまでの研究でBeth Levineたちは、beclin1タンパク質に特定の変異があるマウスは脳と筋肉におけるオートファジーが増加し、この変異によってアルツハイマー病のマウスモデルの認知機能が改善することを示していた。Levineたちは、今回の研究でbeclin1変異マウスの寿命が延びただけでなく、さまざまな老化関連表現型(例えば、心臓疾患、腎臓疾患、腫瘍の発生)が減少して、健康寿命も延びたことを明らかにした。また、beclin1の変異は、抗老化タンパク質klothoの欠損を原因とするマウスの早期死亡と不妊を救済できることも分かった。
Levineたちは、beclin1のこの変異(これによってbeclin1の負の調節因子がbeclin1に結合できなくなる)が哺乳類のオートファジーの増加、早期老化の予防、健康寿命の向上、長命の促進に有効な機構となる可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0160-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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