Research Press Release
抗原補給所
Nature Immunology
2011年11月21日
ウイルス感染後の哺乳類細胞では通常、I型インターフェロン(IFN)が生産されるが、意外なことに、水疱性口内炎ウイルス(VSV)感染の際に特殊な免疫細胞でIFNの作用が阻害されることがわかった。この発見は、ワクチンの設計の際に意味をもつかもしれない。 Usp18は、I型インターフェロン情報伝達系を抑制する宿主タンパク質である。K S Langたちは、脾臓にみられる金属親和性マクロファージと呼ばれる特殊な細胞が大量のUsp18を発現することを明らかにした。このマクロファージ中では、Usp18がIFNを阻害するおかげでウイルスの複製が可能になるが、中和抗体や抗ウイルスT細胞の産生には、このウイルス複製が必要なのである。このマクロファージの「抗原補給」機能を阻害すると、VSVに対する獲得免疫応答がうまく起こらず、中枢神経系へとウイルスが移行してしまう。金属親和性マクロファージに的を絞ったワクチンがあれば、獲得防御免疫反応を引き起こせる確率が高まるかもしれない。
doi:10.1038/ni.2169
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change