Research Press Release
神経炎症を誘導する因子
Nature Immunology
2011年4月25日
多発性硬化症の動物モデルで神経炎症を誘導するシグナル伝達にとって必須の細胞内シグナル伝達分子が同定された。
多発性硬化症のような自己免疫疾患の根底には、中枢神経系を攻撃する免疫細胞が存在している。
今回、B Becherの研究グループとA Rostamiの研究グループは、軸索の周りに存在し、「自分の」ミエリンタンパク質を認識する活性化T細胞が、脳組織に浸潤して、別の炎症性メディエーターであるインターロイキン23(IL-23)に応答して細胞内シグナル伝達分子のGM-CSFを分泌することを明らかにした。GM-CSFは、他の免疫細胞に指示して、IL-23の産生を増進させて、神経炎症過程を恒久化させる。GM-CSFを産生できないT細胞を有するマウスには、神経炎症が起こらなかったため、GM-CSFが、この実験モデルにおける神経炎症の原因だとされる。
このシナリオからは、脳炎誘発性免疫応答を誘導するIL-23とGM-CSFのフィードフォワードループの存在が示唆されている。ヒト多発性硬化症においてGM-CSFが神経炎症を誘導するかどうかは不明だが、今回の研究によってもたらされた知見は、IL-23とGM-CSFがヒトの場合にも同じ役割を果たす可能性のあることをはっきりと示している。
doi:10.1038/ni.2027
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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