【環境】石炭燃焼の副産物から新たな化合物が発見される
Nature Communications
2017年8月9日
このほど石炭灰試料を分析する研究が行われ、これまで知られていなかった無機化合物が大量に発見され、この化合物が毒性を有する可能性が認められたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究で、石炭燃焼による排出物質を追跡観測するための新たな環境マーカーが得られた。ただし、この化合物の毒性可能性は、ゼブラフィッシュを使って検証されたものであり、ヒトに対する毒性評価は行われていないことに留意する必要がある。
石炭の燃焼は、環境とヒトの健康に深刻な影響を及ぼす可能性のあることが知られている。石炭燃焼によって生成する粒子状物質は、大気汚染の一因となることがあり、全世界で年間330万人の死者が、直径2.5 μm未満の粒子によって命が縮められたと推定されている。
今回、Michael Hochellaたちの研究グループは、米国と中国の12か所の石炭火力発電所から集めた石炭灰試料を分析し、これまで石炭燃焼の副産物として知られていなかったナノスケールのチタニア亜酸化物粒子が試料中に大量に含まれていることを発見した。この粒子は、マグネリ相と呼ばれ、炭素中に自然に存在している酸化チタン(TiO2)鉱物が燃焼することで生成される。Hochellaたちは、この無機化合物を環境マーカーとして用い、全世界で石炭燃焼の影響評価ができるという考えを示している。
さらに、Hochellaたちは、ゼブラフィッシュを使って毒性を調べたところ、特定の環境条件下でマグネリ相がゼブラフィッシュ胚に対して有害な作用を及ぼす可能性のあることを発見した。ただし、Hochellaたちは、ヒトの組織に対する影響との関係で毒性検査をさらに進める必要のあることを強調している。
doi:10.1038/s41467-017-00276-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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