Research Press Release
漁業の経済性低下
Nature Climate Change
2011年11月21日
気候変動の結果として全世界の海洋漁業における経済的損失が増大する可能性が高いことを指摘する総説論文が、Nature Climate Change(電子版)に掲載される。 20世紀になると、気候変動が海洋の状態を変え、海水温が上昇し、海洋の成層と酸性化が進んだ。そして、最近の研究では、こうした海洋の変化が、海洋生産性と魚種資源の分布に影響を及ぼしていることが明らかになっている。海洋生産性の低下と魚種資源の分布の変化は、経済に甚大な影響をもたらすことがあり、究極的には世界の数百万人の人々が収入減や栄養不足に苦しむ可能性がある。 R Sumailaたちの総説論文では、気候変動による海洋生態系の生物物理学的変化を示す最近の証拠を検討し、こうした変化が各国の漁業収入と漁業経費に与える影響可能性について考察している。例えば、ペルーの場合には、1997〜1998年のエルニーニョ現象の際の海面水温の変化による外海漁業の水揚げ高の減少によって、2600万米ドル(約21億円)以上の収入減となった。Sumailaたちは、気候変動下での漁業管理体制に関する研究を深める必要があり、漁業を制限し、特定の漁具の使用を禁止し、生計手段の多様化を促すためのスポンサー付きのプログラムのような適応対策を検討すべきだ、と主張している。
doi:10.1038/nclimate1301
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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