Research Press Release
前立腺がんにかかわる新たなタンパク質
Nature Communications
2011年5月11日
腫瘍抑制タンパク質の1つであるPTENは、前立腺がんなど多くのがんにおいて不活性化しているが、今回、α-マンノシダーゼ2C1というタンパク質が、前立腺がんにおいてPTENの機能を不活性化することが明らかになった。この新知見によって、前立腺がんにおける腫瘍発生に関する知識が深まった。この研究結果を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。
腫瘍形成の機構は複雑だが、今回、D Tangらは、腫瘍抑制因子PTENを不活性化するα-マンノシダーゼ2C1というタンパク質を同定した。Tangらは、α-マンノシダーゼ2C1を過剰発現する前立腺がん細胞をマウスに注入する実験を行って、腫瘍の形成を認めた。また、Tangらは、PTENタンパク質を発現するヒト前立腺腫瘍に高濃度のα-マンノシダーゼ2C1が含まれることも明らかにした。さらには、前立腺がんの生存分析によって、α-マンノシダーゼ2C1が無再発生存率の低下と関連していることが実証された。
前立腺がんについての理解を深めるには、実験室のマウスとヒト試料を用いて、前立腺がんにおけるα-マンノシダーゼ2C1の役割を調べる研究を進めることが必要だ。
doi:10.1038/ncomms1309
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
がん:膵臓がんまたは大腸がんの患者において有望な効果を示すワクチンNature Medicine
-
生態学:熱波が熱帯の鳥類の個体数減少と関連しているNature Ecology & Evolution
-
気候変動:ペリト・モレノ氷河の後退が最近大幅に加速Communications Earth & Environment
-
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見されるScientific Reports
-
気候変動:鉱物資源の不足が低炭素化移行を制限する可能性Nature Climate Change
-
人類の進化:スラウェシ島における初期ホミニンの居住Nature