【生物工学】匂い嗅ぎをする蒸気検出器で性能の改善を図る
Scientific Reports
2016年12月1日
匂い嗅ぎによって蒸気検出器が化学物質(例えばTNT)を検出する能力が高まる可能性を明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究では、3Dプリンターで作製したイヌの鼻の模型を使って、匂い嗅ぎの空気力学的特性を調べ、その知見を用いて爆発物検出器を加工して吸気口を取り付け、イヌのように匂いを嗅げるようにした。この改良の結果、爆発物検出器の検出能力は16倍向上した。
今回、Matthew Staymatesの研究チームは、イヌの鼻に解剖学的に類似した物体を3Dプリンターで作製し、それを用いてイヌの匂い嗅ぎの外部空気力学的特性を調べた。空気の流れを可視化する実験が行われ、匂い嗅ぎの呼気相に鼻から発する空気ジェットによって鼻の前面にある蒸気を含んだ空気が鼻孔に引き寄せられることが判明した。こうした鼻による匂い嗅ぎで、匂い物質の検出能力が空気を継続的に吸い込む場合の18倍に達したことも明らかになった。
Staymatesたちは、この知見に基づき、市販の蒸気検出器向けにイヌが用いる空気力学的原理を模倣した特製の吸気口を設計した。その結果、この吸気口による匂い嗅ぎにより、TNT蒸気の検出能力が、空気を継続的に吸い入れる方式(蒸気検出器の通常の作動モード)と比べて16倍向上したことが分かった。
Staymatesたちは、イヌから学んだことが、爆発物や麻薬の検出に用いる次世代の蒸気試料採取器に役立つ可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/srep36876
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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