Research Press Release
太陽光で水を素早く殺菌
Nature Nanotechnology
2016年8月16日
太陽光を照射すると水を殺菌する材料が、今週報告される。この殺菌材料は、ナノレベルの薄さの硫化モリブデン(MoS2)膜でできており、可視光を利用して素早く水中の細菌を殺すことができる。
紫外(UV)光を使えば直接殺菌できるが、UV光は太陽エネルギーの4%にすぎないので、UV光を利用した水の殺菌処理には時間がかかる(最長で48時間の照射が必要)。今回Yi Cuiらは、可視光の吸収に必要な電子特性を持つ層状化合物MoS2を、基板に対して層が垂直になるよう配向させることによって、可視光全体(太陽エネルギーの約50%)を利用できる殺菌材料を開発した。この材料は、MoS2層で活性酸素種が生成するため、大腸菌(Escherichia coli )やフェカリス菌(Enterococcus faecalis)などの細菌を迅速に殺すことができる。
また、Cuiらは、触媒として働く銅膜をMoS2膜の上に追加することによって、殺菌処理をさらに高速化でき、たった20分で清浄水(99.999%以上の殺菌効果)が得られることを見いだした。こうした有望な性能は、可視光による水中のさまざまな病原体(細菌やウイルスなど)の不活化に向けて大きな可能性を示すものであるとCuiらは結論付けている。
doi:10.1038/nnano.2016.138
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
音楽:1973年以降、人気楽曲の歌詞はよりネガティブになっているScientific Reports
-
海洋生態学:シャチはイルカを追跡してサケを狩るScientific Reports
-
考古学:意図的な火起こしの初期の証拠Nature
-
医学:断食がマウスにおける乳がんのホルモン療法への反応改善と関連するNature
-
遺伝学:14の精神疾患に共通する遺伝的シグナルNature
-
考古学:ローマの建築技術に関する明確な証拠Nature Communications
