【健康】心臓突然死のリスク評価に役立つ仮想心臓
Nature Communications
2016年5月11日
心臓発作を起こした患者の心臓のデータをもとにして個別化コンピューターモデルが作成され、この患者が(心拍が不規則になる状態で命に関わる)不整脈を起こすリスクを評価するために利用できることが明らかになった。この3Dコンピューターモデルにより高リスク患者かどうかを判定でき、患者は、判定結果によって植え込み型除細動器を外科的に埋め込むことを希望できる。この研究結果について記述された論文が、このたび掲載される。
不整脈による心臓突然死は、先進国の主たる死亡原因だが、現在利用できる高リスク患者の判定法は、患者の心臓の幾何学的形状の個人差が考慮に入っておらず、治療効果が限定的となっている。
今回、Natalia Trayanovaたちは、臨床磁気共鳴画像を用いて、心臓発作を起こしたことのある41人の患者の心臓の電気的活動と幾何学的形状の詳細なコンピューターモデルを作成した。Trayanovaたちは、心筋壁の幾何学的形状の計算と心臓の電気的不安定の計算を組み合わせて、個々の仮想心臓(心臓のコンピューターモデル)が不整脈を起こす傾向を評価することができた。そして、Trayanovaたちは、利用可能な患者の臨床データを用いて、この評価結果を過去にさかのぼって検証し、将来的に患者の心拍に命に関わるような変化が生じるかどうかを予測する上で、今回発表された方法が既存の臨床基準より著しく有効なことを明らかにした。
この新しい方法は、別の独立した患者集団での有効性の確認が行われていないが、非侵襲的な個別化リスク評価ツールとして、不整脈による心臓突然死を予防し、数多くの不必要な植え込み型除細動器の埋め込み手術をなくせる可能性があるという考えをTrayanovaたちは示している。
doi:10.1038/ncomms11437
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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