火星の斜面は沸騰水が刻みだした可能性がある
Nature Geoscience
2016年5月3日
火星表面でこれまで観測された変化は、薄い大気の低圧条件下において液体の水が沸騰して形成された可能性があるとの報告が、今週のオンライン版に掲載される。
火星表面の低圧の大気では、水は液体として安定ではなく、すぐに凍結するか沸騰するので、液体の水は一時的にしか存在しない。火星の夏の間に斜面上に現れ伸びていくように見えた流れは、塩水(塩分を含んだ水)の流れが原因とされてきたが、少量の水の一時的な流れがこのような表面の変化をどのようにして作り出すのかは明らかではなかった。
Mario Masseたちは、地球上の火星実験施設で一連の室内実験を実施し、火星表面を模した条件下で水が堆積物とどのように相互作用をするかを調べた。Masseたちは、砂でできた斜面の頂上に氷の塊を置き、溶けた水が結果的にどのように砂を通って斜面下方に浸透するかを観察した。地球に似た条件下では、水が少しずつ流れることによる斜面の変化はほとんど見られなかった。しかしながら、火星に似た低圧条件下では、水は沸騰して砂粒を噴出させ、砂粒は山積みとなってやがて崩壊することが分かった。Masseたちは、実験室の斜面では、この過程が、火星で見られるのと似た小さな流路を形成することを発見し、赤い惑星でも同じような過程が働いている可能性があることを示唆している。
同時掲載のNews & Views記事で、Wouter Marraは、「大量の水や塩水が安定に存在することを必要とせずに、火星上の水の不安定性によって、観測された特徴を形成するために必要な形態学的活動を説明できる可能性がある」と述べている。
doi:10.1038/ngeo2706
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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