Research Press Release
【免疫学】結核に対する防御効果を高めた新ワクチン
Nature Communications
2015年10月14日
新たに開発された結核ワクチンが、唯一存在する結核ワクチンより防御効果の高いことがサルの研究で実証された。この新しいワクチンは、免疫系の強力な応答を誘発し、致死量のMycobacterium tuberculosis(結核の病原菌)に感染したサルを防御できる。結核は、今も世界的な流行病であり、その一因として、現在の予防接種法に限定的な防御効果しかないことが挙げられる。そのため新しいワクチンが緊急に必要となっている。
結核を引き起こす可能性はないが、特異的な免疫応答を誘発できる改変M. tuberculosisを用いたワクチンの開発が、Deepak Kaushalの研究グループによって行われた。このワクチンを吸入投与されたマカクザルでは、その後の大量の結核菌注入に対する高い感染防御効果が見られ、免疫応答の改善と結核の症状の緩和もあった。重要な点は、この防御効果がマカクザルにBCGを接種した場合よりも相当に強力だったことだ。BCGは、現在唯一使用されている結核ワクチンだ。
この論文に示された予防接種法は、エアロゾルワクチンの接種と弱毒性M. tuberculosisを組み合わせたものだが、これまでより強力な新しいワクチン候補の開発に向けた第一歩となる可能性がある。
doi:10.1038/ncomms9533
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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