Research Press Release
【細胞生物学】モデル原始細胞を用いた原始的な細胞周期の予測
Nature Communications
2015年9月30日
生きている原始的な細胞が進化して複製能力を持つようになった過程を説明する上で、実験室で作り出された人工細胞が役立つ可能性のあることを報告する論文が、今週掲載される。
これまでの研究では、脂質を利用して作られた微小な球状粒子にタンパク質とDNAを取り込んで、モデル細胞が作られていた。このモデル細胞を操作すると、DNAを複製し、2つに分裂したが、細胞周期の再現はできなかった。生きている細胞は、細胞周期によって増殖、分裂し続けている。
今回、菅原正(すがわら・ただし)教授(神奈川大学)の研究グループは、こうした複製特性を模倣することに成功した。そのために、菅原たちは、脂質を用いて細胞を模倣した別の球状粒子を用いて、分裂したばかりの人工細胞と融合させる簡単な方法を開発した。この方法を用いれば、分裂したばかりの人工細胞が、分裂過程を再び開始させるために必要なタンパク質と脂質、DNAを全て得ることができる。その結果、人工的な実験室環境で細胞周期のモデルが作製された。
この細胞周期のシミュレーションでは極めて少量の生体材料しか用いられないため、これこそが、原始的な単細胞生物が進化して自己複製する能力を持つようになったシナリオとして妥当なものといえるのかもしれない。
doi:10.1038/ncomms9352
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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