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気候変動:歴史的データが示す中国における雹嵐発生日数の増加

Nature Communications

2025年9月3日

Climate change: Historical data reveals increasing hailstorm days in China

Nature Communications

中国において雹嵐(hailstorms)発生日数が1850年以降増加していることを報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。約3,000年に及ぶ中国の歴史文献に基づく分析結果は、19世紀半ば以降の雹嵐発生日数の変動が人為的な気候変動によって引き起こされている可能性を示唆している。

雹嵐は、特に農業生産や人的財産に顕著な損害をもたらす。最近の雹嵐傾向の変化(ほとんどの地域で雹嵐の規模と深刻化が予想される)は、人為的気候変動と関連していると考えられている。しかし、このような小規模現象に対する長期観測データが不足しているため、雹発生の変化を検出することは困難である。

Qinghong Zhangら(北京大学〔中国〕)は、中国の歴史書(紀元前886年から紀元1948年)の雹害記録、政府の雹害記録(1949~2000年)、および中国全土2,000以上の気象観測所による雹嵐観測データ(1950~2010年)を統合し、西暦1500年以降の雹嵐発生日数の変動を分析した。著者らは、雹嵐発生日数が1700年代の年平均10日から1940年代の年平均60日へと増加したことを確認した。また、1500年から1948年の雹嵐データを用いて訓練したニューラルネットワークモデルを開発し、温暖化が継続するシナリオ下での将来の雹嵐発生日数を予測した。モデルは、最高排出量の気候シナリオ下では、2072年までに雹嵐発生日数が2017年比で107%増加する可能性があると予測した。

本研究結果は、地球温暖化と中国における雹の発生との関連性を浮き彫りにしており、温暖化した気候下ではさらなる雹被害が予想されることを示唆している。

シュプリンガーネイチャーは、国連の持続可能な開発目標(SDGs;Sustainable Development Goals)、および当社のジャーナルや書籍で出版された関連情報やエビデンスの認知度を高めることに尽力しています。本プレスリリースで紹介する研究は、SDG 13(気候変動に具体的な対策を)に関連しています。詳細は、「SDGs and Springer Nature press releases」をご覧ください。

Zhang, Q., Li, R., Li, W. et al. Climate impacts and future trends of hailstorms in China based on millennial records. Nat Commun 16, 8000 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-63028-7

doi: 10.1038/s41467-025-63028-7

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