注目の論文

経済成長を予測する新しい方法

Nature Physics

2018年7月31日

A new technique for forecasting economic growth

国際通貨基金による国内総生産(GDP)の成長予測を補完する、より優れた新しい予測方法について報告する論文が、今週掲載される。この新しい予測方法では、経済成長を、複雑系の物理から生まれた手法を用いて製品レベルの輸出データを分析することで、その動態を予測できる物理系として扱う。

国家経済のような複雑系のモデル化は、極めて困難である。経済学者たちは、ますます増え続ける大量のデータを利用することはできても、そうしたデータから再現性のある確実な結果を得ることはいまだ容易ではない。複雑系の物理には、伝染病の伝播や交通移動など、個々の要素の観点からでは理解できない系をモデル化する手法があり、そうした手法が役に立つ可能性がある。

今回Andrea Tacchellaたちは、利用可能な過去のデータの中によく似たものを見いだし、その時間発展を調べることによって、未知の複雑系の振る舞いを予測できるという着想に基づいて、GDPの予測方法を開発している。こうした方法は、低次元モデル(次元は、入力される変数の数)を用いたときにしか確実に機能せず、データを見境なく増やすと、予測の信頼性が低くなる。そこでTacchellaたちは、国家の1人当たりのGDPと「適応度(fitness)」を入力にするというたった2次元のモデルを用いて、GDPを効率よく予測できることを実証している。適応度とは、国家の競争力を表す単一の量で、Tacchellaたちが大規模な数学的プロセスによって輸出データから構築したものだ。

Tacchellaたちは、今回の予測と国際通貨基金が公表した過去のデータに基づく予測を比較して、25%の事例で今回の予測がより正確であったことを示している。さらに、この2つのモデルの誤差は相関していないことから、GDPの成長について補完的な知見が得られることが示唆され、2つのモデルを組み合わせることで予測を改善できる可能性がある。

doi: 10.1038/s41567-018-0204-y

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