注目の論文
【環境】福島第一原発の近くに生息するサルの血球数が少ない
Scientific Reports
2014年7月24日
Environment: Blood changes in monkeys near Fukushima
福島市の森林地域に生息する野生のニホンザルの血球数が、青森県のサルと比べて少ないことを報告する論文が掲載される。この結果は、ニホンザルの血球数の変化の一因が、福島第一原子力発電所事故後の放射性物質の被曝であった可能性を示唆しているが、正確な原因は証明されていない。
今回、羽山伸一(はやま・しんいち)たちは、福島第一原子力発電所から70 kmの地点に生息している61匹のサルと同発電所から約400 km離れた下北半島に生息している31匹のサルを比較した。今回の研究では、福島のサルの赤血球数、白血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値が、いずれも下北半島のサルより有意に少ないことが判明した。また、福島のサルの筋中放射性セシウム濃度(放射線被曝の指標の1つ)は、生息地の土壌汚染レベルと関係していたが、下北半島のサルの筋中放射性セシウム濃度は、いずれも検出限界以下だった。福島のサルの場合、未熟なサルの白血球数が筋中放射性セシウム濃度と負の相関関係にあったが、成熟したサルには、そのような関係は見られなかった。この点について、羽山たちは、若いサルの方が放射性物質に脆弱である可能性が示されていると考えている。また、血球数の少ないことについては、免疫不全の徴候であるとし、そのためにサルが流行性感染症にかかりやすくなる可能性があるという見方を示している。
羽山たちは、福島のサルの血球数が少ない原因が、感染症や栄養不良ではないとするが、放射線障害が原因であることを確認するためには、さらなる研究が必要なことも指摘している。
doi: 10.1038/srep05793
注目の論文
-
4月25日
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
4月24日
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
4月22日
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
4月17日
神経学:パーキンソン病に対する幹細胞治療の安全性を臨床試験によって実証Nature
-
4月15日
生体医工学:視覚障害者の移動を支援するウェアラブルAIシステムNature Machine Intelligence
-
4月15日
健康:テクノロジーの活用が高齢期の認知機能低下リスクを軽減するかもしれないNature Human Behaviour