注目の論文

重症のアレルギーを抑制

Nature Immunology

2010年6月7日

Suppressing severe allergy

特殊な免疫細胞の一種、肥満細胞が発現する新しい阻害性受容体が、重篤なアレルギー反応を抑制するとの報告が寄せられている。

アレルゲンや昆虫毒、一部の薬剤が引き金となって、アナフィラキシーとよばれる強い免疫応答が起こることがあり、感受性の強い人にとっては命にかかわることもある。この免疫応答は、原因となる毒素に接触すると急激に起こる。この応答にかかわるのはIgEとよばれる特殊な抗体と肥満細胞で、アレルゲンとIgEの複合体が引き金となって肥満細胞の脱顆粒(ヒスタミンをはじめ、アレルギー反応の原因となる有害物質を放出する過程)が起こる。

渋谷彰たちは、肥満細胞で発現されているAllergin-1という受容体を新たに同定した。Allergin-1は肥満細胞上のIgE受容体を不活性化することにより、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。Allergin-1をもたないマウスでは、アナフィラキシー応答の程度がより強くなった。

ヒトでもallergin-1が発現されており、これが重度のアレルギーの制御に利用されている可能性が考えられる。しかし、allergin-1自体がどのような仕組みで活性化されるのかを解明するには、さらに研究が必要である。

doi: 10.1038/ni.1886

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度