健康科学:都市設計は身体活動に影響を与える
Nature
2025年8月14日
Health science: City design affects physical activity
都市環境が容易に移動しやすく設計されていると、身体活動が促進されることを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。米国内の1,609都市にわたる5,000人を超える個人の携帯電話のデータを解析した結果、「歩きやすい」とされる地域では平均的な1日当たりの歩数が増加することが明らかとなった。この結果は、人口の健康にとって都市環境の重要性を考慮した政策の策定に役立つかもしれない。
都市環境の設計が身体活動に影響を与えることは示唆されているが、一部の研究はサンプルサイズの小ささなどの要因による制約があった。Tim Althoffら(ワシントン大学〔米国〕)は、スマートフォンの健康アプリの利用者2,112,288人の利用者による大規模な身体活動データを分析し、都市環境に応じて身体活動(歩数記録)がどのように変化するかを測定した。著者らは、施設への近接性や歩行者の利便性を示す指標(ブロックの長さや交差点の密度など)に基づいて開発された「Walk Score」を用いて「歩きやすさ」を測定した。スコアは1から100のスケールで、100が最も歩きやすいことを示す。
著者らは、3年間の観察期間中に少なくとも1回以上転居した1,609都市の5,424人のデータに注目した。歩きにくい地域から歩きやすい地域に転居すると、身体活動量が増加し、逆の場合は減少することが示された。例えば、「Walk Score」が48/100の都市からニューヨーク市(スコア89/100)に転居した178人は、平均1日当たりの歩数が5,600歩から7,000歩に1,400歩増加した。この効果は、逆の方向へ転居した参加者にも同様に見られた。これらの観察結果は、性別、年齢、およびボディマス指数(BMI:body mass index)の値に関わらず一貫していた。
著者らは、都市部の歩きやすさを向上させることで身体活動がどのように増加するかを予測するためのシミュレーションを実施した。著者らは、すべての米国人がシカゴやフィラデルフィアと同等の歩行スコア(78/100)の都市に住んだ場合、推奨される有酸素運動ガイドラインを満たす米国人が11.2%増加する可能性があると予測している。これらの結果は、都市環境(例えば、自動車依存度の低下や公共交通機関の改善)が健康増進に直結する身体活動を直接改善する重要性を示す確固たる証拠を提供すると、著者たちは結論づけている。
- Article
- Open access
- Published: 13 August 2025
Althoff, T., Ivanovic, B., King, A.C. et al. Countrywide natural experiment links built environment to physical activity. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09321-3
doi: 10.1038/s41586-025-09321-3
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