新しい神経細胞による我が子の認識
Nature Neuroscience
2010年5月10日
Recognizing one's own brood with new neurons
海馬と嗅球はそれぞれ脳の一領域で、海馬は記憶と、嗅球は嗅覚と深い関係にある。マウスの海馬と嗅球では、雄が自身の子を認識するのにたいへん重要な神経の生成が行われているという研究結果が、Nature Neuroscience(電子版)に発表される。
この結果は、雄マウスが成体となったその子孫を認識するのはその父親であったという経験に基づいており、その過程には新しい神経細胞と神経ホルモンの生成が極めて重要であることを示している。父性による若年もしくは成体となった子の認識は、ヒト以外の霊長類、ヒト、げっ歯類のいくつかの種でみられるとされている。
S WeissとG Makは、実験系統のマウスでは、もし雄が自身の子と接触したりそれらを保護したりする機会を与えられた場合、子が成体になっても自身の子を認識するようになることを発見した。この父性による子の認識には、成体期にも絶えず新しい神経が生成されている領域、嗅球と海馬における高度な神経形成が関係している。Weissらは、脳下垂体で生成されるホルモンであるプロラクチンが、父性による子の認識に必要であることも発見した。このホルモンが不足している雄マウスは、子との接触に応じた成体時神経生成の増強がみられず、子の認識もできなくなる。
異なるホルモンによって神経生成を促進すると、プロラクチンの不足を埋め合わせ、雄親における子の認識が回復する。似たような仕組みがヒトの子認識にも用いられているのか、また、これがその後の父と子の間のふるまいに影響を与えるのかどうかは、いまだ研究段階である。
doi: 10.1038/nn.2550
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