注目の論文

長く続く記憶を断ち切る

Nature Immunology

2009年11月9日

Disrupting lasting memory

新たに見つかったタンパク質が、長く持続する抗体応答を生み出すカギを握っていることが明らかになった。

免疫系では、外来物質や外来生物の攻撃を撃退するために、T細胞やB細胞など、さまざまな免疫細胞が働いている。B細胞は微生物に対する抗体をつくるが、感染後もその微生物による攻撃に備えて相手を忘れず、長く「記憶」を保つので、体は感染にすぐに反応して微生物を除去できる。

Chris Goodnow、Richard Cornallたちは、一連の変異マウスを作成し、異常な免疫応答を示すマウスをスクリーニングした。すると、微生物に対する最初の抗体応答は起こるのに、長期持続する特異性の増した抗体応答が起こらない、2種類の異なった変異マウス群が見つかった。著者たちは、この両系統のマウスに見られる免疫異常の原因となる遺伝子1個を同定した。

この遺伝子がDock8で、これがコードするタンパク質は、抗体産生B細胞が他の免疫細胞と安定な複合体を形成するのを助ける。この免疫複合体があると、相互作用する細胞間で情報の受け渡しができ、B細胞に、より効果的な抗体を作る方法や記憶細胞に変化する方法が指示される。

最近、ヒトにもDock8変異が見られ、免疫不全症に関係することが明らかにされており、今回の結果が裏付けられた。

doi: 10.1038/ni.1820

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度