注目の論文
自然界から発想を得た原子結合の切断
Nature Chemistry
2009年3月30日
Bio-inspired bond-breaking
新たに作製された鉄化合物を使うと、分子内の強力な炭素-水素結合を急速に切断でき、その速さは、従来の方法の最大1,000倍に達することが、Nature Chemistry(電子版)に掲載される論文で報告されている。今回の研究は、化学者にとっての大難題の1つを解決に導く可能性を秘めており、石油成分系化合物をより高価値の製品に工業的に転換する上で特に重要な意味をもっている。このように自然を模倣することで、酵素の活性部位の働きについての理解も進むと考えられる。
L Queらは、自然界でこうした働きをする酵素から発想を得た。この酵素は、まだ十分に解明されていないが、2個の酸素原子によって架橋された2個の鉄原子が含まれると考えられている。同じような酸素架橋型鉄化合物は、これまでに2つ作製されたが、いずれも十分な活性が得られなかった。今回作製された化合物には、4個の窒素原子の「突起」で鉄原子をつかむ配位子があり、鉄錯体として初めて、低分子アルコールの強力な酸素-水素結合を攻撃することもできる。
doi: 10.1038/nchem.162
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