注目の論文
宿主の免疫系が細胞内病原体に屈服
Nature Immunology
2008年11月3日
Subverting host immunity to intracellular pathogens
結核菌Mycobacterium tuberculosisなどの病原体が、どのような仕組みによって免疫応答の作用を逃れて感染できるのかが明らかになった。この仕組みは、さまざまな病原体による病気の新しい治療標的になる可能性がある。
感染と闘うには、活性化されたマクロファージと呼ばれる免疫細胞が重要な役割を果たす。マクロファージが生産する重要な抗菌分子は一酸化窒素(NO)という有毒な気体で、結核菌、リーシュマニア、Trypanosoma cruziなどの病原体による感染のコントロールに必要である。
P Murrayたちの報告によれば、これらの病原体はマクロファージがもつアルギナーゼ1という酵素の発現を活性化するという。アルギナーゼ1はマクロファージ中のNO活性を低下させるので、これらの病原体はこの酵素を誘導することによって、本来なら効果の高い感染に対する自然免疫応答を回避できる。アルギナーゼ1をマクロファージから欠失させると、例えば結核菌感染の際に肺の結核菌量が著しく減少する。
この研究によってこれらの細胞内病原体が免疫系を回避する仕組みが突き止められ、正常な免疫応答に、これらの感染性病原体に対する特有の「盲点」があることが浮き彫りになった。
doi: 10.1038/ni.1671
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