注目の論文

HIVワクチンSTEPの臨床試験が不成績に終わった理由

Nature Medicine

2009年7月21日

Why did the HIV vaccine STEP trial fail?

最近、HIVワクチンSTEPの臨床試験で望ましくない結果が出て、エイズワクチンの開発に深刻な打撃を与えた。その理由を説明する有力な説が、今回寄せられた2つの論文によって否定された。

このSTEPの臨床試験では、参加者に、HIV遺伝子を3個もつよう遺伝子操作した弱毒型の風邪ウイルス(Ad5)を接種した。この弱毒型HIV遺伝子が免疫系を刺激して、参加者がHIVにさらされた場合に、より強力な免疫反応が起こることになると考えられた。しかし実際には、ワクチン接種の結果、HIV-1の獲得量が増加し、特に、よくみられるAd5中和抗体レベルの高い参加者の場合に顕著だった。

HIV-1は体内のT細胞を標的とするので、STEP臨床試験の結果から、Ad5抗体レベルの高い患者にワクチン接種するとT細胞数が増加し、これがHIV-1の感染の標的として働くとの仮説が出された。

D BarouchのグループとM Bettsのグループは、Ad5特異的中和抗体のベースライン値とAd5特異的T細胞応答との間には関連性がないことを発見した。また、参加者のAd5抗体レベルが高くても、ワクチン接種後に、Ad5抗体レベルの低い参加者よりも強いAd5特異的免疫応答を示すわけではなかった。

これらの知見は、Ad5特異的T細胞がSTEP臨床試験でのHIV-1感受性の上昇に直接寄与していないことを示しているが、STEP臨床試験が望ましくない結果に終わった本当の理由は謎のままである。

doi: 10.1038/nm.1989

「注目の論文」一覧へ戻る

プライバシーマーク制度