注目の論文
肺水腫の「犯人」とされるカルシウムチャネル
Nature Communications
2012年2月1日
A calcium channel ‘guilty’ of pulmonary edema
肺において高度に発現する、カルシウムイオンチャネルのかかわるシグナル伝達カスケードが虚血再灌流誘発性肺水腫の原因だとする研究結果が明らかになった。この新知見は、この疾患の治療に使える可能性のある新しい薬理学的標的の存在を浮き彫りにしている。その詳細を報告する論文が、今週、Nature Communicationsに掲載される。 虚血再灌流誘発性肺水腫は、肺不全を引き起こすことがあり、命にかかわる疾患の一つだ。肺移植後の死亡原因や急性肺塞栓症の最も一般的な原因の一つでもある。血管内皮細胞における活性酸素種の濃度と細胞内カルシウム濃度が上昇することが、肺傷害の第一段階だと考えられており、それが肺液の異常蓄積と水腫の発生を引き起こす。今回、A Dietrichたちは、内皮細胞の障壁機能喪失への関与が疑われているタンパク質を特異的に欠損させたマウスを骨髄移植によって作製した。そして、Dietrichたちは、内皮細胞上のタンパク質NADPH依存性オキシダーゼが、活性酸素種の産生の原因であり、この活性酸素種がシグナル伝達カスケードを起動し、最終的にはイオンチャネルTRPC6が活性化することを明らかにした。TRPC6が活性化すると、内皮細胞へカルシウムが流入し、そのために内皮細胞の透過性が高まって、水腫の発生可能性が高まる。 肺水腫の初期段階に関与するタンパク質を明らかにした今回の研究は、虚血再灌流誘発性肺水腫の有望な治療法への道を開くものかもしれない。
doi: 10.1038/ncomms1660
注目の論文
-
7月16日
神経科学:老化と神経変性疾患のバイオマーカーを解明するNature Medicine
-
7月15日
健康:健康な高齢化における世界的な格差の要因の評価Nature Medicine
-
7月10日
ゲノミクス:タンパク質は古代のエナメル質に保存されているNature
-
7月10日
気候変動:クジラの糞が温暖化に関連する有毒藻類ブルームの大発生を記録するNature
-
7月8日
がん:1,100万人を超えると予測される胃がんの原因は細菌かもしれないNature Medicine
-
7月3日
ゲノミクス:古代DNAがエジプト人の祖先の謎を解明するNature